【小説を読もう!】究極のゲームの恐怖 「究極のゲーム」とは?

小説

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【小説を読もう! 其の2】

こんにちは。
日本の片隅の一般人です。

僕は、ゲームが好きです。

ファミコン時代からゲームの進化を見てきたので、最近のゲームには驚かされると同時に、プレイしていてとても楽しいです。
おそらく、これからもゲームを続けてい行くとは思いますが、これからの進化を考えるとワクワクしてしまいます。

今回は、近未来「究極のゲーム」を描いた小説を紹介したいと思います。

原版
新装版

『クリス・クロス ~混沌の魔王~』(1994年)
 著:高畑 京一郎
 電撃文庫(株式会社メディアワークス)

今では様々なライト・ノベルが出ている電撃文庫。
その第1回電撃大賞(現電撃小説大賞)を受賞した作品です。

今回も結末ネタバレなしの紹介です。

興味を持っていただけたら、ぜひ読んでみてください。

究極のゲーム

この物語の中では、究極のゲームというものが描かれています。

プレイヤーが完全にゲーム世界に入ったような感覚に陥ることのできる極めて完成度の高い仮想現実です。

ゲームをする人なら、一度はそんなゲームを想像したり、憧れたことはないですか?

システムとしては、プレイヤーがカプセルの中に横たわり、VR機器に加えて体の各所に電極を取り付け、さらには薬品投与と催眠術でゲーム世界への没入感を実現させた、言ってみればVR超進化版です。
……薬品投与と催眠術というところは、ちょっと危ない感じがしますけどね。

ゲームは単純なダンジョンRPG。
プレイヤーは、戦士、盗賊、僧侶、魔法使いの中から好きなひとつを選び、モンスターが徘徊する迷宮内を探索しながら進み、最下層でボスのドラゴンを一番早く倒した人の勝ちというもの。
途中で出会った他のプレイヤーとはパーティーを組むことも、敵対して戦うこともできます。

さすがに攻撃を受けたときの痛みに関しては、再現してしまうと問題もあるようで、あくまで攻撃を受けたことを知らせるためのちょっとした刺激に止められています。

その他、物語の中での技術的理由から、ゲーム内に一部再現できなかったという感覚があります。
結果、それが物語の中でのカギとなる場面が出てくるので、ここでは語らないでおきますね。

あらすじ

物語は、主人公が「究極のゲーム」試験イベントに参加し、既にゲームがスタートしているところから描かれています。

日本国内の大手電子機器メーカー数社が協力して作り上げた超ド級のスーパーコンピューター「ギガント」。
その可能性のお披露目として、選ばれたのが仮想現実を用いた究極のゲーム『ダンジョントライアル』です。

仮想現実世界の完成度、リアル感の素晴らしさに感心しつつ、迷宮の探索、モンスターとの戦闘を楽しむ主人公。
他のプレイヤーとの出会いもあり、パーティーを組んで協力しながら進んでいきます。そんな中、ちょっとした演出から感じはじめた違和感……。

進んでいくにつれ、その違和感はより大きく確かなものへと変わっていきます。

目の前で起きたリアルすぎる光景が果たして演出なのか、判断することができずに混乱する主人公プレイヤーたち。

ゲーム強制終了ボタンは、反応なし。

軽い痺れのような程度の微弱なはずの痛覚は、現実で感じるリアルな痛みに。

相手は人間の力を超えた怪物ばかり。
ゲームの設定上、プレイヤーの命を奪いに来るので本気も本気です。

例えるなら野生動物の本気の力や刃物や鈍器の容赦ない攻撃。
むしろ日常の生活では感じる機会もないほどのシャレにならない痛みです。

やがて、閉じ込められたゲームの中で、主人公たちは「ゲーム内での死」が「現実の死」と重なりはじめ、恐怖に怯えることに……。

本当の意味での「究極のゲーム」

現実と仮想現実の境の恐怖。
物語は、最後の最後まで気を抜けない展開となっています。

感想

内容はとても面白く、また文章も読みやすいので、一気に読めてしまいました。

今ではVR技術も随分と進歩していますが、小説が出版されたのは1994年です。
ゲーム業界では『ファイナルファンタジーⅥ』がヒットした年です。
家庭用ゲーム機はスーパーファミコンの時代。オンラインどころか、グラフィックもまだ2D(平面表現のみ)だった時代です。

そんな時代に、物語の中で描かれているゲームは、まさに究極といえるもので、早くこんな時代が来ないかな、と思わせてくれました。

「ゲームだから」

物語の中では、ゲームクリエイターの苦悩が描かれているところがあります。

プレイヤーの「ゲームだから」という感覚が嫌いで、もっと本気で真剣にゲームをプレイしてほしい、というクリエイターの思いです。

恥ずかしながら、かつて学生時代に一度はゲーム業界を目指した僕としては、共感でしてしまうところがありました。

RPGなどで全滅したときには、悔しい思いはしますが、それでもセーブデータなどのバックアップデータがありますからね。

今でも対戦型のオンラインゲームなどプレイしていて思うこともあります。

銃器で撃ち合うゲームなどで、平気で正面から突撃して見事にやられるプレイヤーとかいます。
それが自分のチームにいたりすると「おいおい (T_T)」と思ってしまいます。

これこそ「ゲームだから」の感覚ですね。

音声で再現された『クリス・クロス』

この『クリス・クロス』ですが、ラジオ・ドラマ(CDシネマ)も制作されました。

ラジオ・ドラマとは、小説をそのまま読んだものではなく、音声で描かれたドラマです。

仮想現実空間のゲームの感覚、張り詰めていく空気を音声でとても上手に表現されています。

音声で描かれた『クリス・クロス』の世界。

活字が苦手な人は、ぜひ、こちらをどうぞ。

もちろん、小説を読んだ人でも十分楽しめます。

↓ これは小説です。

『クリス・クロス ~混沌の魔王~』(1994年)
 著:高畑 京一郎
 電撃文庫(株式会社メディアワークス)

読んでいただいて、ありがとうございました。
また来ていただけたら嬉しいです。

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